2020年10月末、第11世代Coreプロセッサが登場しました。
軽量グラフィックカードである「GeForce MX350」と同等の性能を持つと言われる、このシリーズがいったいどんなものか。
PC選びの際に目安となるCPUの性能情報をご紹介します。
※2021年1月11日に新たなデータを追記しています。データの正確性に問題があると判断した機種は計測しなおしました。
第11世代Coreプロセッサ(開発コードネーム Tiger Lake)の概要
第11世代Core『TigerLake』の新しい性能や機能とはどんなもの
オフィシャル情報では、公証値で、基本性能がCPU性能20%UP、AI処理性能が最大5倍、グラフィック性能が2倍です。
開発コードネームは“Tiger Lake”で、幾つかの新しい技術に対応しているのは新世代ならではですが、めぼしい点をピックアップすると以下の通りになります。
次世代のメモリLPDDR5-5400まで対応予定。
・PCI Express 4.0対応。
・Thunderbolt 4対応。
TDP(熱設計電力)をPCメーカー側で設定できるようになったとか、細かい点は色々ありますが、PC売り場で「要するにどうなったの?」と訊かれたら、大多数の販売員が「また速くなったんですよ。特にグラフィック性能が上がりました」の一言で済ますでしょう。
個人的にパソコンに詳しい人はまだまだ少数派だと感じています。「出張先の部屋とか自室と違って(PC環境的に)貧弱じゃないですか。ガチで大容量エンコードかけつつ、4Kモニターへ2枚出力したいのですが…」という人はまずめったに見ません。そこで、「大多数の人にとって新型CPUの恩恵は何なのか」をテーマに、従来プロセッサと比較していきたいと思います。
第11世代Core『TigerLake』一番の推しどころ&Ryzenとの切り分け
一番の推しどころは飛躍的に上昇したグラフィック性能です。
MX350に近いグラフィック性能をオンボードCPUで獲得した意義は大きいでしょう。
MX250でも凄いと体感できるくらいでしたから、もう一段上まで駆け上がったように感じます。
とは言え、Ryzenファンの人にしてみれば Ryzen7-4700U などと比べた場合、スコア的に出遅れていると感じるのは否めません。
ただ、RyzenシリーズはAdobe系のアプリでパフォーマンスが低下するという話が出ており、未だにこのあたりの相性問題を拭えていないようです。
また、Intelの言を信じるなら、ACアダプターを外してバッテリー稼働させた状態では、Ryzenシリーズは30~50%も処理能力が低下するのだとか。

AC電源接続時と比較したバッテリ駆動時の性能低下率(PC Watchの記事より)
ザックリと言ってしまえば、トップに位置する尖った性能が欲しい人、特に電源を繋ぎっぱなしでいられるならRyzen推し。多くの人が当てはまるであろう一般的な用途で、バッテリー稼働するモバイルPCでも安定した性能を欲する手堅い実稼働派ならIntelがオススメになります。
Intelが提唱している「スコアではなく、実際に使った時の利便性で比較するべきだ」にはアルパカも同意です。
というわけで、今回はベンチマーク「PCMark10」による比較をしています。
正直に言ってしまえば、このあたりの性能差やスコアはほとんどの人がスルーしているように思います。
車の販売店で「今度の新型はさらに低重心! 時速100kmまで2.7秒! ミッドシップエンジン・リアドライブの真骨頂がここにぃぃぃ!」と販売員がはしゃいでいても、お客さんは白けている場合がほとんどでしょう。
「マフラーは?」
「大口径のスポーツマフラーが標準装備ですよ」
「制動性能は?」
「ブレーキパッドはレース用に強化してあります。乱気流制御の為、キャリパーとホイールの間にブレードフィンを3枚貼ってあります」
「すげぇぇぇぇ!」
…という販売側が小躍りするような展開はまずありません。
パソコン売り場ではさらに顕著です。
「何人乗り?」
「1人です」
「トランクは広いの?」
「全て燃料タンクになっております」
「燃費は?」
「大幅アップのリッター3km!」
「戦車かよ…」
パソコン選びのサイトに来て、スポーツカーが売れない理由が分かってくるというお得なコーナーはこのへんにしておきますが、アルパカ的にはデータに振り回されず、「出せる予算と欲しい性能が吊り合っている」パソコンを見つけてほしいと願っています。
ちなみに戦車の燃費は1リットルで340mも走れれば超低燃費です。
閑話休題。
【注意】第11世代Core『TigerLake』が、購入時のままでは高いパフォーマンスが出せない理由
いくつかの機体を計測していて気がついたのですが、第11世代Core『TigerLake』は出荷される段階で最新のドライバーに更新されていないものが混じっています。
少なくともDynabookでは複数の機体でそれを確認しており、おそらく他のメーカーでも同様のことはありえると思っています。
最新状態で計測した時と、そうでない時では感覚的に違いが分かるほど速度の差が出ます。以下、PCMark10で計測した例です。

Dynabook VZ/HPのi5モデルでIntelのドライバーを更新していない状態。高いバッテリーで計測(トータルスコア:3,775)

Dynabook VZ/HPのi5モデルでIntelの最新ドライバーに更新した状態。高いバッテリーで計測(トータルスコア:4,322)
従来のノートパソコン用省電力CPUでは、ドライバーを割り当てることなく最良のパフォーマンスが発揮できるよう、設定されていました。
そのため、PCの扱いに慣れた人でも気づくのが遅れがちです。急いで機体性能を調べる人だとベンチマークを回す前にチェックしていないこともありえます。
せっかく買った最新CPU搭載機なのに、パフォーマンスを引き出せないのは勿体ないですから、ぜひとも最新ドライバーになっているかどうかをご確認下さい。
ドライバ状態の確認、及び更新方法は以下通りです。
※折りたたんでいますので、クリック(スマホではタップ)で開いて見れます。
第11世代Core『TigerLake』を含む、PCMark10の比較グラフ
「PCMark10」では、Officeソフトを使った事務的な用途や、グラフィック重視の創作作業など、リアルな使用用途に合わせたスコアを出すことが可能です。
詳細データまで見ることができるので、ご自身の使い方に合った箇所を比較していただくと性能を掴みやすいと思います。
基本的な見方としては、大枠のスコアが高いほど性能が良く、個別計測された内容で s(second=秒)が少ないほど、作業時間が短くて優秀です。逆にFPSは高い方が良い数値です。
例えば、ネット検索が多い人は「Web Browsing」を見て下さい。
その項目にあるブラウザ名で普段から使っているもの(Chromeなど)があれば、その速度が分かります。
Excelなどの事務作業が多い人は「Productivity」のスコアを比較、「Spreadsheets」で処理にかかる秒数を比較しましょう。
コロナ禍でテレワークの方もずいぶん増えてきました。Zoomを多く使うなら「Video Conferencing」を比較することで「ウチには“いっこくどう”がいる」と言われるか否かが分かるという具合です。
2020/12/15 DynabookのVZ/HPによるベンチマークスコアを組み入れました。
2020年11月リリースのVZシリーズは、TDP28Wギリギリまで性能を上げた設定で、富士通製の同じモデルと比べて、i7では頭一つ上のスコアが出ています。
逆にi5ですと若干ですが、ラインナップの上位陣より下に位置します。
いずれを選んでも充分な使い心地は約束されていますが、もし、パソコンの動作が遅くなるなど、ハードな使い方が多い人で性能重視にしたい方はDynabook系のi7で選ぶのをオススメします。
「PCMark10」の比較グラフ一覧
トータルスコア 全体的な性能を計測したもの

TigerLakeと他CPUを比較したPCMark10の「トータルスコア」
「PCMark10」計測機種一覧
今回計測しているのは以下の機種です。
実際にはもっと計測しているのですが、明らかに異常な数値になったりかけ離れた性能のものは入れていません。また、最新のRyzenシリーズは残念ながら計測する機会がありませんでした。いずれ機会ができましたら追記します。
簡単に言うとトータルスコア3,000が一般的なご家庭や事務的な仕事での快適さの分かれ目ですが、よりレスポンスよく速度を求めるのであば3,500はあった方が良いと思います。
メーカー 型番 | シリーズ名 (リリース日) |
ストレージ 形式 |
CPU | トータル スコア |
---|---|---|---|---|
ダイナ W6FHP7CZDS | FZ/HP 2020/12 | SSD PCIe | Core i7-1165G7 | 4,760 |
ダイナ W6VHP7CZBL | VZ/HP 2020/11 | SSD PCIe | Core i7-1165G7 | 4,752 |
ダイナ W6GHP7CZEL |
GZ/HP 2020/11 | SSD PCIe | Core i7-1165G7 | 4,682 |
富士通 WU2/E3 | UH90/E3 2020/10 | SSD PCIe | Core i7-1165G7 | 4,503 |
富士通 WC2/E3 | CH90/E3 2020/10 | SSD PCIe | Core i5-1135G7 | 4,389 |
ダイナ W6VHP5BZBL |
VZ/HP 2020/11 | SSD PCIe | Core i5-1135G7 | 4,342 |
ダイナ W6PHP5CZBB |
PZ/HP 2020/11 | SSD PCIe | Core i5-1135G7 | 4,342 |
ダイナ W6GHP5CZBW |
GZ/HP 2020/11 | SSD PCIe | Core i5-1135G7 | 4,260 |
ダイナ W6SHP7CZAR | SZ/HP 2020/12 | SSD PCIe | Core i7-1165G7 | 4,257 |
ダイナW6PZ55CMBA |
PZ55/M 2020/3 | SSD PCIe | Core i7-10510U | 4,188 |
Lenovo 81YM009CJP | Slim 550 2020/7 | SSD PCIe | Ryzen 3 4300U | 4,139 |
ダイナ W6SHP5CZAL |
SZ/HP 2020/12 | SSD PCIe | Core i5-1135G7 | 4,125 |
DELL MI533-AWHBCS | Inspiron 13 5000 2020/12 | SSD PCIe | Core i3-1115G4 | 3,982 |
ダイナ W6GZ83CMLB |
GZ83/M 2019/9 | SSD PCIe | Core i7-10710U | 3,807 |
ASUS X512DA-BQ1136TS | VivoBook 15 2020/4 | SSD PCIe | Ryzen 7 3700U | 3,737 |
HP ENVY13 aq1078TU | ENVY 13 2020/7 | SSD PCIe | Core i5-1035G1 | 3,722 |
ダイナ W6GZ73CMWB |
GZ73/M 2020/1 | SSD SATA | Core i5-10210U | 3,617 |
Lenovo 81NB0029JP | S340 2019/5 | SSD PCIe | Ryzen 5 3500U | 3,525 |
ダイナ PVZ62JL-NNA |
VZ62/J 2019/2 | SSD SATA | Core i5-8250U | 3,474 |
ダイナ PAZ45GB-SNL | AZ45/G 2019/4 | SSHD ※ | Core i5-8250U | 3,427 |
ダイナ W6ZZ75CLLC |
ダイナ ZZ75/L 2019/9 | SSD SATA | Core i5-8265U | 3,266 |
HP ar0101AU |
ENVY X360 13 2019/12 | SSD PCIe | Ryzen5 3500U | 3,083 |
ダイナ W6SZ73CLBB | SZ73/L 2019/11 | SSD SATA | Core i5-8250U | 2,770 |
DELL NI315LAWHBADM | Inspiron 15 3000 2020/12 | SSD PCIe | Athlon Silver 3050U | 2,715 |
ダイナ PAZ55GB-SND | AZ55/G 2018/10 | HDD 5400rpm | Core i7-8550U | 1,178 |
※SSHDとはハイブリッドハードディスクの略です。ハードディスクに付帯したメモリにキャッシュを蓄積して速度を上げる機構で、キャッシュに溜まった情報を元にした作業は早くなります。一回目より二回目の計測の方がより良い結果になっているのは、そのためです。構造上、一回目と二回目のスコアに開きがありすぎますので、両方を記載しています。
使用目的に合わせた性能比較グラフ
Essentials PCの基本性能を測るテスト

TigerLakeと他CPUを比較したPCMark10の「Essentials」のグラフ
Productivity ビジネスアプリの処理性能を測るテスト

TigerLakeと他CPUを比較したPCMark10の「Productivity」のグラフ
Digital Content Creation クリエイティブ性能を測るテスト

TigerLakeと他CPUを比較したPCMark10の「Digital Content Creation」のグラフ
計測の解説とアルパカの結論
第11世代Core『TigerLake』を計測したところ、グラフィック性能は確かに大幅上昇していますが、意外とスプレッドシート系の数値が低く、この分野に弱いのかもしれないと思いました。
ひとまず「Spreadsheets」で 5,500 のスコアをマークしていれば、一般的な事務用途での使い方ではまったく問題はありませんが、重たくなるようなExcel作業を中心に使われる人は要注意です。
だいたい、10MB前後のExcelファイルを複数同時に開いて、関数、ハイパーリンクを多用しているファイルを扱う、万行単位のフィルタリングをするような作業は重くなりがちです。ですが、あくまでもスコア上からの判断ですから、もう少し調べようと思っています。
その他の部分では、モビリティというカテゴリー同士で比べるなら優秀な処理能力を有していると言えるプロセッサーです。
もっともオンボードですから、これで3DCADができるというわけではありません。
MX350までの能力でしかないのは確かですから、そういう意味では旧来のオンボードではキツかった作業が楽になった、という感覚です。
代表例としては今までのオンボードCPUでは、どう頑張ってもできなかった4K動画編集がまあまあできるようになってきたというもの。
どこかのサイトでは4K動画編集はできませんと言い切っていましたが、後から書き直したようです。実際、MX350と同程度のスコアだとどうなんだろう、と思ってはしまいますし、その手の作業量が多い人にとってはメインPCたりえませんが、しかし実際にはご覧の通りです。この範囲までなら、という程度ですができますね。
4K以外だとどうなんだとなると、以下のような動画を造る作業が、よりスムーズになります。
この動画で使用されているのは、Core i7-10710U と MX250 を搭載しています。
クリップスタジオによるデジ絵描き → 描いた様子をビデオ撮影 + 画面をキャプチャー → パワーディレクターで組み合わせて動画作成
というのを一本にまとめたものですね。
動画でも指摘しているのですが、ここまで込み入った作業をしようとすると、タイムラインの重なりが多くなる後半には動きが鈍くなります。また、動画の書き出しにも時間がかかります。
この動画では MX250 搭載機種を使っていたので問題なく最後まで作業を続けられ、終えることもできましたが、オンボードCPUだけであれば、後半は相当キツかったのだろうと予測できます。(軽いデジ絵を描くくらいの前半作業なら、オンボードで十分です)
Tiger Lakeなら、これらの負担が大幅に軽減され、後半も楽に造れるとお考え下さい。
第11世代Core『TigerLake』の i5 と i7 について
「Core i5-1135G7」は同世代のi7と比較しても、スコア上で大きな違いはありませんでした。すでに他社のTiger Lakeを調べた方も同様のことを言っていたので、メーカーによる設定の違いが大きく変わっていなければ共通事項と思われます。
最高性能を求めるのでなければ、金額差も考慮すると i5 の組み合わせで買う方がコスパが良いと言えそうです。
電源モードに関して
今回の計測は実用性から考えて、最も多くの人が使うであろう「高パフォーマンス」のモードでのみ比較しています(いずれ機会があれば最も高い~、も掲載するかもしれません)。

高パフォーマンス

最も高いパフォーマンス
富士通製品の個別記事にも書きましたが、第11世代Core『TigerLake』の搭載機種を電源設定により「最も高いパフォーマンス」にした時と「高パフォーマンス」にした時とでは、ある程度、スコアに差は出るものの大きな違いではありませんでした。
処理能力を限界まで引き出すよりも、長時間稼働できた方が良い人の方が多いでしょうから、基本的には「高パフォーマンス」で使い続けるのがオススメになります。(デフォルト設定は「高パフォーマンス」になっています)
LIFEBOOKに搭載されている第11世代Core『TigerLake』について
WC2/E3(CHシリーズ2020年10月モデル)のCore i5-1135G7
使用したのはWC2/E3(カタログモデルのCH90/E3と同性能)です。
Core i5-1135G7、メモリ 8.0GB、512GB SSD PCIe
Core i5-1135G7のPassMarkの結果
「PassMark」は総合的なPC性能、個別部品(ストレージやメモリなど)で測るのに向いています。

LIFEBOOK WC2/E3(CH 2020年10月モデル)のCore i5-1135G7搭載機、PassMark-高パフォーマンス時

LIFEBOOK WC2/E3(CH 2020年10月モデル)のCore i5-1135G7搭載機、PassMark-最も高いパフォーマンス時
Core i5-1135G7のPCMark10の結果

LIFEBOOK WC2/E3(CH 2020年10月モデル)のCore i5-1135G7搭載機、PCMARK10-高パフォーマンス時(要約)

LIFEBOOK WC2/E3(UH 2020年10月モデル)のCore i7-1165G7搭載機、PCMARK10-最も高いパフォーマンス時(要約)
WU2/E3(UHシリーズ2020年10月モデル)のCore i7-1165G7
今回、新しく出てきたばかりの第11世代Core『TigerLake』搭載のレビュー機とあって、ベンチマークを回した結果を以下にまとめておきます。
使用したのはWU2/E3(カタログモデルのUH90/E3と同性能)です。
Core i7-1165G7、メモリ 8.0GB、512GB SSD PCIe
Core i7-1165G7のPassMarkのスコア

LIFEBOOK WU2/E3(UH 2020年10月モデル)のCore i7-1165G7搭載機、PassMark-高パフォーマンス時

LIFEBOOK WU2/E3(UH 2020年10月モデル)のCore i7-1165G7搭載機、PassMark-最も高いパフォーマンス時
※掲載しているスコアは「最も高いパフォーマンス」の方が若干低くなっていますが、間違いではありません。電源設定に関わらず、PassMarkではほぼ同等の数値になります。
Core i7-1165G7のPCMark10の結果

LIFEBOOK WU2/E3(UH 2020年10月モデル)のCore i7-1165G7搭載機、PCMARK10-高パフォーマンス時(要約)

LIFEBOOK WU2/E3(UH 2020年10月モデル)のCore i7-1165G7搭載機、PCMARK10-最も高いパフォーマンス時(要約)
PCMark10のベンチマーク詳細一覧
こちらでは、比較用として一通りの詳細項目を掲載しておきます。
細かく比較したい方はご参考にどうぞ。
※全て高パフォーマンスにて統一。
※トータルスコアの高い順に並んでいます。
第11世代Core『TigerLake』 がモバイルPCでオススメの理由

Dynabook V8(Core i7-1165G7搭載機)のファイナルファンタジーXIV_ 漆黒のヴィランズ ベンチマーク結果
Tiger Lakeは人によって、はっきりと評価が分かれます。
「Ryzenに比べれば」という一言がすべてを表しているでしょう。
アルパカとしては、Ryzenシリーズのパフォーマンスを否定するわけではありませんが、モビリティPCに限って言えば、一般的な使い方であればIntelをオススメしています。
PCMark 10 ApplicationsベンチマークにおけるOffice 365総合スコアでは、Intelシステムは平均的にAMDシステムより高い性能を実現しているだけでなく、バッテリ駆動時の性能低下も5%程度であった。その一方でAMDのシステムは38%も性能低下が見られたという。
記事を額面通りに受け取ると、電源供給をし続けるデスクトップパソコンならともかく(コンセントに繋いであるのが普通です)、持ち運んでバッテリ電源で動かすモバイルPCでは、Ryzenだとその実力が発揮しきれていないという事のようです。
「そんなこと言ったってベンチマークのスコアが…」
これもよく聞きます。
問題はそのベンチマークでしょう。
多くの計測では長時間の負荷をかけ続けた結果です。CinebenchのR23は、負荷をかける時間がさらに長くなりました。いわゆる“重たい”ゲームや映像画像のエンコードなど、高負荷をかけ続ける作業は誰もがやるほど一般的ではありません。
そして、AMDシステムの最大の難点は初速が遅いことです。バッテリ駆動時にCPUの電圧を引き上げる遅延が7~10秒ほど。
最も一般的かつ、広く誰もが使うWebブラウジング(ネットサーフィン)やOfficeワークなど、作業を切り替えながら使い続ける基本的なPC操作ではその実力を充分に発揮できません。速度が上がってきた頃には次の作業に切り替わっているのですから、せっかくの伸びしろが生かされないのです。エアコンをつけて適温になる頃、部屋を移動する。その繰り返しをするようなものですから、もったいないですね。
もっとも、Intelの肩ばかりを持つつもりはありません。ターボブースト2.0の機能は素晴らしい反面、すぐに処理能力が落ちます。だからこそ、VAIOはトゥルーパフォーマンスという独自技術で性能の補填をしました。
つまり、Ryzenシリーズはひとつの作業・アプリ・ソフトウェアを使い続けて真価が発揮される「長時間ユーザー」向けのパフォーマンス設定と言えます。
一方、IntelのCoreシリーズは真逆で、細かい作業の積み重なる一般的な事務作業、ウィンドウを頻繁に切り替えるユーザーや細かいデジ絵作業に向いています。ほとんどの人は、文書や表計算をしつつ、ちょっと調べたいことがあるとブラウザを見て、たまにメールをチェックするなど、意外にウィンドウを切り替えて使いますので、Intelの方がオススメという結論に至りました。
しかし、第11世代Coreの『TigerLake』は、高負荷が続く作業でもなかなか頑張れるようになりました。
もちろん、長時間高負荷という土俵ではRyzenに抜かれますが、立ち上がりが早く、そこそこ負荷にも耐えられるという進化は、多くのユーザーにオススメしやすくなっています。
総括しますと、モバイルPCにおいて、高負荷をかけ続けるような作業がまったくない、または多くないのであれば、TigerLakeがイチオシです。Intelの言う実利性とはこのことを指しています。
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