PC選びの際に「Intel Core」にしようか、「AMD Ryzen」がいいのか。迷っているけどどっちが良いのか分からない、という人は多いと思います。
数値的なものは常に一元的な見方に留まるので、CPUMarkだけで把握できるものではなく、PassMark社の公称値で高くとも実際に使うと快適ではなかった、ということもありえる話です。
そのため、こちらでは機体毎の快適性を測るPCMark10による計測を行い、比較用のグラフにまとめてみました。
PC選びの際のご参考にどうぞ。
※個人で集めた情報につき、機種数は少ないです。主にローエンドから始めていますが、都度、追記してゆきます。
※PCMark10の内容は「IntelのCPU、第11世代Core(Tiger Lake)についての性能比較」の旧記事でもまとめていましたが、電源設定による計測を分けていなかったため、ノートPCでは不向きと判断してこちらで計測しなおしています。併せて見比べて頂けると分かりやすいと思います。
- 第11世代Core『TigerLake』とRyzen 5000シリーズの切り分け
- 第11世代Core『TigerLake』と第四世代Ryzen 5000シリーズを含む、グラフ一覧
- トータルスコア 全体的な性能を計測したもの
- Essentials PCの基本性能
- App Start-up Score アプリケーションの起動速度
- Video Conferencing Score オンラインビデオの能力
- Web Browsing Score ブラウジング能力
- Productivity ビジネスアプリ全般の性能
- Spreadsheets Score ExcelやAccessの処理能力
- Writing Score ワープロソフトの文章作成能力
- Digital Content Creation 総合的なクリエイティブ性能
- Photo Editing Score 2D全般の加工編集能力
- Rendering and Visualization 3Dレンダリング能力
- Video Editing Score 動画編集能力
- 最後に・まとめ(2022.3 上旬)
第11世代Core『TigerLake』とRyzen 5000シリーズの切り分け
2020~2021年にかけての大きな変化は、グラフィックカードが搭載されていないオンボードCPUでも、MX350に近いグラフィック性能を発揮できるようになった、というのが大きいと思います。これはAMD、Intel双方ともに切磋琢磨し合ったように見えます。
細かい比較はグラフを見て頂くとして、ざっくりまとめると以下のようになります。
Ryzen5000シリーズの能力が高いは見ての通りですが、4000まで確認していたアプリによる相性問題は5000以降も継続されているようです。
Lightroomを中心としたAdobe系アプリは性能を発揮できずにおり、ゲームでは「FF14 漆黒のヴィランズ」は苦手ですが「フォートナイト」は得意など、かなり使い方に向き不向きが分かれます。
得意、不得意な分野はPCMark10でも確認されており、第11世代Core『TigerLake』にしても同様です。
以下、使い方ごとにまとめました。
AMD | Intel | |
---|---|---|
アプリの立ち上げ | ||
オンライン会議 | ||
Webブラウジング | ||
ワープロ系 | ||
Excel系 | ||
写真加工 | ||
動画編集 | ||
レンダリング | ||
備考 | Adobe系がいまいち。 アプリの相性問題あり。 |
アプリの相性問題はほぼないが、作業によって相性の良し悪しがある。 |
得意、不得意な分野は「PCMark10」でも確認されており「Productivity」で良い数値でも、個別では弱い分野が見えてきます。例えば、AMD系はExcelやAcssesなど、スプレッドシート系の能力が高く、写真のレタッチやレンダリングにも強いです。反面、動画編集にあまり強くなく、アプリ全般の立ち上げ速度は第11世代Core『TigerLake』の方が早いです。Ryzenシリーズは以前から初速の遅れが指摘されており、それが数値として現れたのだろうと思います。
Ryzenは使うアプリによって、かなり左右されるのは厄介な相性問題となって残っていますので、せっかくデジタルクリエイティブな能力が高くとも、Adobeを使う機会が多いようでしたらIntelがオススメです。5000シリーズもZen3という新しいアーキテクチャを取り入れてもなお、このあたりの相性問題が完全には拭えていません。
逆にIntelもExcel系には弱い、3Dレンダリング処理はRyzenには遠く及ばない、などが露呈してきており、そうした使い方が多いかどうかで選んで頂ければと思います。
気を付けないといけないのは、ベンチマークに頼らず実測で処理速度を調べると、意外とRyzenよりIntelの方が早いことが少なくありません。OfficeワークではRyzenはExcelが得意といっても、関数計算させたときの速度が速いのであって、コピーや置換作業ではIntelが上を行くことが多いです。これはアプリの得意不得意というより、作業毎に枝分かれして速度が変わると思った方が良いです(Office系アプリはこちらの記事にて計測データをまとめています)。
他、Ryzenは初速の遅さから作業の切替え時に快適性が損なわれるであるとか、バッテリー稼働させた状態では、パフォーマンスの低下が大きいとか、色々な話を耳にします。
グラフを見て頂くと分かりますが、確かにバッテリー稼働する際のパフォーマンスの低下はIntelよりもRyzenの方が大きいです。そういう意味では、モバイルPCでも安定した性能を欲する手堅い実稼働派ならIntelがオススメになります。ただ、それも最新のRyzen 5000(Zen3アーキテクチャ)のシリーズでは改善されてきており、このままAMDがIntelを追い越すのか注目です。
PCMark10の比較グラフの見方
「PCMark10」では、Officeソフトを使った事務的な用途や、グラフィック重視の創作作業など、リアルな使用用途に合わせたスコアを出すことが可能です。
詳細データまで見ることができるので、ご自身の使い方に合った箇所を比較していただくと性能を掴みやすいと思います。
基本的な見方としては、単純に大枠のスコアが高いほど性能が良いです。
例えば、ネット検索が多い人は「Web Browsing」を。
コロナ禍でテレワークの方もずいぶん増えてきました。Zoomを多く使うなら「Video Conferencing」を比較することで「ウチには“いっこくどう”がいる」と言われるか否かが分かります。
事務作業が多い人は「Productivity」のスコアを比較、ExcelやAccessなら「Spreadsheets」を比較、という具合です。
簡単に言うとトータルスコア3,000が一般的なご家庭や事務的な仕事での快適さの分かれ目ですが(2021年時点での話です。今後はもっと上がります)、よりレスポンスよく速度を求めるのであば3,500はあった方が良いと思います。同様にOffice系の事務作業が多いようなら「Productivity」で5,000以上はあった方が良い、となります。
計測に用いた機種一覧
計測機種 | プロセッサー | メモリ | score | |
---|---|---|---|---|
AMD | Inspiron 16 5625(AMD) | Ryzen 7 5825U(ZEN3) | 16GB(8×2) | 6024 |
AMD | HP Pavilion Gaming 15(AMD) | AMD Ryzen 5 5600H +GTX1650 | 16GB(8×2) | 5784 |
AMD | HP Pavilion Gaming 15(AMD) | AMD Ryzen 5 5600H +GTX1650 | 8GB(8×1) | 5777 |
AMD | HP Pavilion Aero 13-be0000 | Ryzen 7 5800U(ZEN3) | 16GB(8×2) | 5675 |
AMD | Inspiron 14 5425(AMD) | Ryzen 5 5625U(ZEN3) | 16GB(8×2) | 5525 |
AMD | Dell Inspiron 14(7415)2-in-1 | Ryzen 7 5700U | 16GB(8×2) | 5372 |
AMD | Inspiron 16 5625(AMD) | Ryzen 7 5825U(ZEN3) | 16GB(8×2) | 5311 |
AMD | ThinkPad E15 Gen 3 (AMD) | Ryzen 5 5500U | 16GB(8×2) | 5285 |
AMD | Dell Inspiron 14(7415)2-in-1 | Ryzen 7 5700U | 8GB(4×2) | 5214 |
AMD | Inspiron 14 5425(AMD) | Ryzen 5 5625U(ZEN3) | 8GB(8×1) | 5198 |
AMD | ThinkPad E15 Gen 3 (AMD) | Ryzen 5 5500U | 16GB(8×2) | 5166 |
AMD | ThinkPad E15 Gen 3 (AMD)【Win11】 | Ryzen 5 5500U | 16GB(8×2) | 5151 |
AMD | Dell Inspiron 14(5415) | Ryzen 5 5500U | 8GB(4×2) | 5150 |
AMD | ENVY x360 13-ay(AMD)2021 | Ryzen 5 5600U | 8GB(4×2) | 5163 |
AMD | Dell Inspiron 14(5415) | Ryzen 5 5500U | 16GB(8×2) | 5150 |
AMD | ThinkPad E15 Gen 3 (AMD) | Ryzen 5 5500U | 8GB | 4850 |
AMD | Dell Inspiron 14(7415)2-in-1 | Ryzen 7 5700U | 8GB(8×1) | 4763 |
AMD | Microsoft 5PB-00020 | Ryzen 5 4680U MSEdition | 8GB | 4697 |
AMD | NEC Direct N15 PC-GN20N2 | Ryzen 7 4700U | 8GB(4×2) | 4692 |
AMD | ThinkPad E15 Gen 3 (AMD)【Win11】 | Ryzen 5 5500U | 8GB | 4621 |
AMD | Dell Inspiron 14(5415) | Ryzen 5 5500U | 8GB(8×1) | 4603 |
AMD | Dell Inspiron 15(5515) | Ryzen 5 5500U | 8GB(8×1) | 4560 |
AMD | MOUSE B5-R5 RENAS | Ryzen 5 4500U | 8GB(8×1) | 4388 |
AMD | NEC Direct N15 PC-GN12ZQN | AMD 3020e | 4GB(4×1) | 1678 |
Intel | ダイナ W6PZHU5FBB | Core i7-1195G7 | 16GB(8×2) | 5564 |
Intel | MOUSE DAIV 4P | Core i7-1165G7 | 16GB(8×2) | 5177 |
Intel | ダイナ W6PZHU5FBB | Core i5-1155G7 | 8GB(4×2) | 5158 |
Intel | Microsoft Surface Pro 8(2021) | Core i7-1185G7 | 16GB | 5064 |
Intel | HP Elite Dragonfly G2 | Core i7-1165G7 | 16GB | 4944 |
Intel | ダイナ W6FHP7CZDS | Core i7-1165G7 | 8GB(4×2) | 4819 |
Intel | ダイナ W6VHP7CZBL | Core i7-1165G7 | 16GB(16×1) | 4798 |
Intel | ダイナ W6FHP7CZDS | Core i7-1165G7 | 16GB(8×2) | 4732 |
Intel | HP Spectre x360 Convertible | Core i7-1165G7 | 16GB(8×2) | 4667 |
Intel | NEC Direct DT PC-GD298ZZ | Core i7-10700 | 8GB(4×2) | 4664 |
Intel | Microsoft Surface Pro 8(2021) | Core i5-1135G7 | 8GB | 4617 |
Intel | ダイナ W6GHP5CZBW | Core i5-1135G7 | 8GB(オン4+4) | 4251 |
Intel | ダイナ W6BZHS5RAB | Core i5-10210U | 8GB(8×1) | 3917 |
Intel | ダイナ W6BZHR3CAB | Core i3-10110U | 8GB(8×1) | 3483 |
Intel | MS Surface Pro 7(2019) | Core i5-1035g4 | 8GB(4×2) | 3308 |
Intel | NEC Direct DA(S)(2019) | Core i5-8265U | 8GB(4×2) | 3246 |
Intel | NEC Direct NM PC-GN10S | Core i5-10210Y | 8GB | 2778 |
※トータルスコアの「AC電源あり最も高いパフォーマンス」の高い順で並べています。
第11世代Core『TigerLake』と第四世代Ryzen 5000シリーズを含む、グラフ一覧
※全て「AC電源あり最も高いパフォーマンス」のスコアの高い順に並べています。
※赤はAMD系、青はIntel系で色分け&上下のエリア分けをしました。
※ノートPCは「AC電源接続あり状態での最も高いパフォーマンス時」と「AC電源なしバッテリー駆動時の高パフォーマンス時」にて計測しています。デスクトップは「AC電源接続あり状態での最も高いパフォーマンス時」のみとしています。
※Surface Laptop4のみバッテリー駆動時のデータを取り損ねました。収集する機会があれば追記します。
トータルスコア 全体的な性能を計測したもの
用途が絞れておらず、細かく見ていくのが面倒な方はこちらのトータルスコアだけでも見ておくと参考になると思います。
Essentials PCの基本性能
Productivity ビジネスアプリ全般の性能
ビジネス系のアプリ全般の性能を測る指標です。Officeソフトが中心ですが、Microsoft Office 365に関しては以下の記事にて実測での処理速度を比較をしています。より詳しく速度差を把握されたい方はご覧ください。
Digital Content Creation 総合的なクリエイティブ性能
最後に・まとめ(2022.3 上旬)
2022年3月段階で新しく追加された第4世代Ryzenの以下二種類を組み入れました。
Ryzen 7 5825U
Ryzen 5 5625U
2021年11月段階で新しく追加された第11世代Coreの以下二種類を組み入れました。
Core i7-1195G7
Core i5-1155G7
ご覧頂くと分かるように対ZEN3用に送り込まれたこのCoreの型番は、Ryzen 7 5800U を幾つかの分野で追い越しています。その後、出てきたRyzen 7 5825Uがけっこうトンデモな数値を出しており、トータルでとうとう6000を超えてきて、さらに抜き返しました。
この春、いよいよ第12世代Core『Alder Lake』が出てきます。これにてどのような数値を出してくるのか。今から楽しみです。
ちなみにRyzenは未だに電源設定が一つ落ちると、途端に動きが悪くなり、Coreも苦手としているスプレッダーシート系の能力は、未だに伸びていません。
それぞれが苦手分野を伸ばそうとするより、得意分野を伸ばした方がプロセッサー選択の際に分かりやすくはなるものの、もう少しオールマイティに使えるように進化して欲しいと思うところでもあります。
凄く良いと思ったのは最新のRyzenでは、「App Start-up Score」がかなり高まり、初動の速度がCoreに近づいたことです。
一方のCoreはデジタルコンテンツのクリエイティブワークがより一層強くなりました。
また、それぞれでネットブラウジングの速度が速まったことも大きなポイントです。それまでのプロセッサーでは超えられなかった速度をモバイル向けPCで気軽に体感できる利点は大きいと思います。特にこの分野ではCoreの方が一歩秀でており、Core i7-1195G7ならWEBXPRT3ですと、主要3大アプリで300越えが基本となりつつあります。
250あれば十分な速度ではありますが、300だと即時に開いてくれるので、ネット検索の多い人には便利なことこの上ありません。外出先で電源設定が落ちたところで、速度が落ちづらいというのも嬉しいところ。
Ryzen機に比べて値段が高めになることが多いIntel機ですが、こうした部分に価値を見出せるかどうかが選択肢の分かれ目となりそうです。
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