Microsoft Officeは全世界で使われている最も一般的なアプリです。
しかし、その挙動に関してはベンチマークに頼ることが多く、個別の作業で調べられることはあまりありませんでした。
今回は「Microsoft 365 Personal(旧Office 365 Solo)」を使用して、最新のPCでどのように挙動が変わるのか調べたものをご紹介します。
最初に・計測の手順と考え方
元々が軽いアプリなので、ある程度の性能があれば快適に使えます。
しかし、容量が大きくなったファイルを扱う時や、複雑に関数を組まれたExcelファイルを稼働させる際には、とても動きが悪くなります。他のアプリと併用した時も同様です。
様々なプロセッサーによる向き不向きを知るという意味で調べておく必要があると思い、今回の計測に至りました。
最近のPCは、とても性能の良いものが多くなり、Office系アプリで時間のかかる作業というのは限られています。Word系ではもっぱらPDFの出力くらいしか調べていませんが、それでも性能を比較するには良い指標になると思います。
計測では電源設定を「最も高いパフォーマンス」と「高パフォーマンス」の二種で調べています。
移動しながら電源のない場所でOfficeを使う人は多いと思いますので、少しでもバッテリーを長持ちさせながら稼働させたい人は「高パフォーマンス」の部分をご覧ください。

画面右下にある電力設定変更の図
※ここで言う電源設定とはデスクトップ画面右下の電源設定のことを指しています。
※2022年8月17日に第12世代Core『アルダーレイク(Alder Lake)』の計測したものを追加で掲載しました。データ量が多くなってしまったので、電源設定が最も高いパフォーマンス時のみを掲載としています。調べていないわけではないので、いずれまとめて掲載するかもしれません。
計測は最低二回を行い、早い方をグラフ化しています。二回目の方がキャッシュの読み込みにより処理が早まりますが、ファイル名を変えたり保存先を変えるなどで、できるだけ最初にかかる時間で計測しました。
ここで掲載している実測グラフはベンチマークのそれと結果が違っているものがあります。
これは個別の作業ごとにプロセッサーの向き不向きがあるということです。
例えば総合的なExcelの速度としてはベンチマークPCMark10のグラフにある「Spreadsddts Score」を見た方が良く、その中での個別作業ではこちらの実測値でのグラフが参考になる、という具合です。
PCMark10の計測データは以下にまとめています。併せてご覧頂くと分かりやすいと思います。
Excelの処理速度を計測したグラフ(コピー、置換、計算)
計測には31MBのExcelファイル(食品物産のダミー販売ファイル)を使用しています。
Excelをコピー作業、置換作業、計算作業に分けて計測しました。
Excel・コピー
一つのシートに31407行、673445セルに数字、文字が入っているものをコピーした際、クリップボードに取り込み終わるまでにかかる時間を計測しています。
貼り付ける方も計測しようと思ったのですが、今時のPCでは大した負担ではないようですぐ処理を終えます。そこで、負担がかかりやすいコピーデータを取る方のみ計測としました。

Excel・コピーにかかる時間グラフ比較
Excelのコピー機能に関しては全般、Intel Coreの方が優秀な結果になりました。第11世代Core『タイガーレイク(TigerLake)』でも十分な速度です。
この辺りの作業はZen3のRyzen 7 5800Uでも敵わないので、プロセッサー毎の特性のようです。
Excel・置換
全ブック対象で78470件の9文字ずつの置換作業「全国ごっつぁん連合」を「美味しん坊同盟」に変換した際にかかる時間を計測しました。

Excel・置換にかかる時間グラフ比較
この辺りは第11世代Core『タイガーレイク(TigerLake)』ならRyzen(Zen3)と同じくらい。第12世代Core『アルダーレイク(Alder Lake)』ならUプロセッサーでもRyzen(Zen3)を完全に超えます。
Excel・関数計算
こちらでは128000回分のVLOOKUPと、184000回分のSUMIFS(3つの条件)を一度に計算させたときにかかった時間を計測しました。

Excel・計算にかかる時間グラフ比較
第11世代Core『タイガーレイク(TigerLake)』の苦手な部分で、比較するならRyzenの方が絶対的に早いです。
ですが、第12世代Core『アルダーレイク(Alder Lake)』になると、途端にRyzenを超えます。
第12世代Core でも U プロセッサーなら横並びかやや劣るくらいです。ですが、「Inspiron 14 5420」の超高パフォーマンス設定なら Ryzen を超えます。P プロセッサーなら標準設定で確実に超える、というくらいです。
dynabookの機体で計測すると、PプロセッサーはUの倍近い速度で処理を終えます。これはP-coreが倍あるのに比例して早く終えることのできる処理、ということのようです。
このグラフで3秒違えばはっきりと快適さが変わるのが分かるほどの差になります。先にあったコピーや置換能力も併せて考えれば、第12世代Core『アルダーレイク(Alder Lake)』はまさにExcel作業にオススメです。
ただ、Ryzenで極端に動きが悪いのかというと、そんなことはないので、ある程度の速度があれば良い、とするなら。コスパを優先して Ryzen 搭載機にするのは十分アリな選択肢です。
WordとPowerPointの処理速度を計測したグラフ(コピー、PDF化)
Word・PDF化
当サイトの記事を一つ分まるっと、Wordにコピペ保存したものをPDF化して、かかる時間を計測しました。約60MB(48748文字)になります。

Word・PDF出力にかかる時間グラフ比較
WordのPDF出力に関してはIntelの方が全般、早かったです。
この辺りはPCMark10でも「Writing Score」で出ていた通りの結果です。ただ、どうもこの「Writing Score」は文字を扱う繋がりでパワポの速度にも関わっているのではないかと。以下、パワポの挙動もIntelの方が上になります。
PowerPoint・コピー
50.5MBのダミー商談資料内にあるスライド200枚をコピーした際にかかる時間を計測しました。パワポの場合、クリップボードに取り込むよりも張り付ける方が負担が大きいので、そちらのみ計測。
張り付けコマンド後に最終スライド400枚目までプレビュー表示が出るまでの時間になります。

PowerPoint・コピーにかかる時間グラフ比較
トップグレードまでいくとRyzenでも十分早いのですが、第10世代のi5でも10秒ちょいという高タイムでIntel側に軍配が上がります。続けて使うと「あ、Intelの方がちょっと早い」と体感的にもすぐ分かります。
また、こうしたパワポの取り回しは電源設定を一つ落としてもIntelは速度が落ちづらくて快適です。
PowerPoint・PDF化
パワポで時間を取られる作業といえば、やはりPDF化と考え、Wordと同様にPDF化にかかる時間を計測しました。
コピーテスト用に使用した50.5MBのダミー商談資料スライド200枚をそのまま使用しています。

PowerPoint・PDF出力にかかる時間グラフ比較
PDFの出力に関しては、全般 Intel Core の方が早いです。
ただ、プロセッサーの種類によっては Intel Core でも最新上位のCore i7-1185G7と、Core i7-1195G7だと、なぜか電力設定が一つ落ちたバッテリー駆動時には極端に書き出しが遅くなることがあります。そうした時には Ryzen と変わらないレベルです。むしろ Core i5-1155G7 の方がバッテリー駆動時でも速度が落ちません。
そういう意味では Core i5-1155G7 や Core i7-1165G7 は安牌の選択肢なのだと思います。
また、第10世代になるとRyzenと大差はありません。結論、第11世代Core『タイガーレイク(TigerLake)』、または第12世代Core『アルダーレイク(Alder Lake)』なら特にオススメです。
計測のまとめ・Intel Core と AMD Ryzen のOfficeワーク得意不得意一覧
こちらはあくまでも Intel を第11世代Coreとしての比較一覧になります。
第12世代Core『Alder Lake』になると、かなり挙動が変わりますが、特に苦手だったExce作業が同格のRyzenよりも格段に早くなりました。
一時期、苦手と思われていたPDFへの変換系ですが、ドライバの更新とともに改善されつつあるようです。第12世代Core『アルダーレイク(Alder Lake)』の凄いところは、そのポテンシャルの高さと改善される速度の速さです。今後に期待できそうです。
Word、Excel、PowerPointの挙動ざっくりまとめ | ||
---|---|---|
Intel | AMD | |
Excel・コピー | ||
Excel・置換 | ||
Excel・計算 | ||
Word・PDF化 | ||
PowerPoint・コピー | ||
PowerPoint・PDF化 |
※基本的に同じグレード同士(i7に対するRyzen7など)で比較し、全体的な傾向として記載しています。
※価格帯では比較していません。コスパで言うならオススメはRyzen一択になります。
簡単に言うと第11世代Core『タイガーレイク(TigerLake)』までなら、Excel系はRyzenが良いですが、計算はあまり行わずに編集のみならあまり関係ありません。逆に計算ばかり、関数ガンガン組みます、という方ならRyzenです。
ですが、第12世代Core『アルダーレイク(Alder Lake)』も視野に入れるなら、PプロセッサーはRyzenより早くてオススメ。Uなら搭載機種と設定によりますが、Ryzenと同じくらいと考えられます。
WordやパワポならIntelの方が全般取り回しは良いです。これらは全て第11世代Core『タイガーレイク(TigerLake)』以降のものなら、という条件が付きます。
プロセッサーや機体毎の傾向というのはあるもので、用途によって向き不向きが分かれます。
PCMark10のトータルスコアでトンデモな数値を出すRyzenでも実測で見ると上記のように意外な結果に落ち着きます。ベンチマークのスコアを目安に説明はできますし、多くのサイトや販売員はそうしますが、その説明が果たして正しいかどうかは分かりづらいものです。
ベンチマークを見ないわけではなく、合わせて見比べて頂くことで、より、ご自身に合った性能を選びやすくなると思います。
※この記事は調べた機種が増える毎に追記されてゆきます。
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