今回はパソコンの基礎知識編の続きということで、グラフィックカードの基本をご紹介します。
「グラフィックカードってアレですか、ゲームやる人が必要になるやつ?」
「使いたいソフトがOpenGL 3.2 に対応していること…って書いてあるんだけど、これなに?」
という人が読むための記事です。
グラフィックカード一覧記事と併せてお読み頂くと分かりやすいかと思います。
グラフィックカード基本のキの字
グラフィックカード? グラフィックボード? それ必要?
当サイトではグラフィックカード、またはグラボの呼称で統一していますが、呼び名は様々あり、グラフィックボード (graphic board)、グラフィックカード (graphic card)、ビデオボード (video board)、ビデオカード (video card)、ビデオアダプター (video adapter)、VGA (Video Graphics Accelerator)、GPU(Graphics Processing Unit)など、様々な呼び方があります。
全て同じ意味です。
「グラフィック(graphic)」という単語の意味するところは、映像や画像を使った視覚的表現のことを言いますが、それらをパソコンに描画させるには文字での伝達以上に膨大な情報量が必要です。
この辺りの情報量をいかに処理するのか。
何故、グラフィックカードが必要になるのか、というのは前回、ご紹介しました。
要約するとCPUでは追いつかない作業をさせるため、です。
このグラフィックカードの入っていない製品を「CPU(マザーボード)側にグラフィック性能が乗っかっている」という意味で「オンボード」という呼び方をします。
グラフィックカードは一般向けのメーカーパソコンには、ほとんど入っていません。
それでも大半の人は特に問題なくオンボードのPCを使い続けています。
これは、最近のエンジン部分であるCPUにグラフィック機能を高めて入れるようになったこともあり、専用のグラフィックカードがなくても結構、頑張れるようになったためです。
それでも、やっぱり専用カードが入っているのと入っていないのとでは大違い。
どれくらい違うのかというと…。
3Dゲームでも軽い方だと言われている「ドラゴンクエスト X」ですが、どれだけ快適に動作するのかを計測したベンチマークはこの通り。
人気機種「dynabook GZ」シリーズ i7-8550U+8GBあたりのPGZ73JL-NNAで走らせてみた結果はこちらの通りです。
※グラフィック設定 : 最高品質 , 解像度 : 1920×1080 , 表示方法 : フルスクリーンにて。
軽量パソコンでもdynabookのGZは性能を控えめな安全設計にしていますが、国内だと大体このくらいです。
一般的には4000いけば良い方でしょうか。
国内向けでCPUをチューニングしているVTPモデルのVAIOの新型SX14でも5000~6000くらいがせいぜいです。
では、同じ軽量ノートパソコンとして、同じCore i7-8550U+8GBでもPS42 8RB-005JPで、MX150というノートパソコン用のグラフィックカードが積載されている場合ではどうでしょう。
グラフィックカードの世界では大したことはありませんが、それでもこれだけの違いが出ます。
この手の使い方に対して、いかに特化的な能力が必要になるか、ということが分かりますね。
とはいえ、やっぱり普通の使い方をしている人には必要ないのか? と問われれば…はい。
まったくもって、必要ありません。
ご家庭用、一般の事務職などの使い方で特に困ったことにはならない筈です。
具体的には「ネットの検索、年賀状の作成、音楽、写真の管理と印刷。あとはやっぱり、ワードやエクセルなどのOfficeを使う」と言った定番作業でしょう。
写真を軽く加工して年賀状に貼り付けるくらいなら、どうということはありません。
逆に必要となる使い方としては、
「ゲームをやる(主に3D系)、3Dレンダリングソフト、3DCAD、画像の編集を本格的に行いたい(一眼レフのLawデータ加工など)、動画編集を本格的に行いたい(高解像度、複雑に重ねたタイムラインを扱う、そもそもソフトが重いなど)、デジタルでけっこうガッツリ絵や漫画が描きたい(クリスタ、コミスタ、フォトショップなど)、AIにディープラーニングさせたい」
…といったところ。
実際のパソコン販売で対応するのは、ほとんどが上記に含まれます。
また、1つ1つが重たい使い方でなかったとしても、量が多い場合にもグラフィックカードを入れておくことをお勧めすることは結構あります。
例えば、私アルパカは、手がけている作業が広くあります。
使っているのは「GTX 960」を搭載したモデルですが、デジ絵を描くことから始まり、画像の加工、動画の編集、このようにブログも行っています。
たまに株式やFXのチャートも出せば、別の仕事の都合でエクセルやパワポを使うことも。
そうした一つ一つは軽いのですが、積み重なると大きなもので、いちいち待ち時間が発生していたら、一回に5秒しか待たなくても100回も行えば500秒、8分以上待つわけです。
しかも、その8分という時間はまとまって待つ時間ではないので、動画のエンコードのように「作業が始まったから、その間に他のことをしていよう」ができません。
レスポンスの悪さというのは、それだけ貴重な時間を無駄にしてしまうわけですね。
そういった意味では、一般の作業でもCPUを強めのものを選んでおくというのは、やはり意味のあることなのです。
特に「アフィリエイターを目指す」とか「Youtuberを目指す」という目的が定まっている方は時間との戦いでしょうから、グラフィックカード搭載モデル、CPUも強めのもの(できればSSD)をお勧めすることが多いです。
グラフィックカード、GeForce と Radeon の違い
グラフィックカードは、かつて乱立していたグラフィックメーカーが淘汰され、現在残っているNVIDIA 社とAMD 社が二大巨頭です。
この二社が開発したチップセットと設計構造の大枠(リファレンスデザインと言います)を元に、様々なボード開発メーカーが自社ブランドでの販売を行っています(ASUS、GIGABYTE、MSI、Leadtek、ELSA、GALAXY、玄人志向など)。
GTX 1050など、有名どころの型番がASUSでもMSIでも別々に販売しているのはそのためです。
大枠の設計を同じにしているので、メーカーが変わっても型が同じなら、ほぼ同一の性能と考えて問題ありません。
そこで、グラフィックボード選びを抑えるには、この二社の特徴を知ること。
それぞれの二社の特徴と、ブランド名に続く型番の覚え方から始まります。
まず、特徴をまとめると以下のようになります。
メーカー名 | NVIDIA (ヌビディア、エヌビディア) |
AMD(エーエムディー) |
---|---|---|
ブランド名 (個人向け) |
GeForce (ジーフォース) |
Radeon (ラデオン) |
特徴1 | 3Dの質感を表すテクスチャをきめ細かく表すのが得意。 | 光彩の表現や流動的なものを表すのが得意。 |
特徴2 | オンラインゲーム(3D)に強い。 | 動画に強い。 |
特徴3 | 初心者向け。 | 玄人向け。 |
特徴4 | Radeonより値段が高い。 | GeForceより値段が安い。 |
特徴5 | CUDAに対応。 | OpenCLなら有利。 |
特徴6 | DirectXに強い。 | OpenGLに強い。 |
一般的にはこんなところでしょうか。
改めて見ると、どちらも良し悪しありますが、シェアとしては圧倒的にGeForceの方が上です。
ゲームユーザー層が多く使っているとか理由は色々とあるのですが、ドライバの更新頻度が高くて安心して使えるというメーカーイメージが多くの人に受け入れられやすいのだと思います。
もっとも、最近ではRadeonも相当エラー潰しに力を入れているようなので、今ではこの辺りはあまり気にしなくても良いかもしれません(一説には新たにドライバを書き直すのではないかとも)。
また、RadeonはEyefinity機能で 6枚モニター同時接続ができるなど、特化的な尖った機能や性能があるのに対し、GeForceが万能的に動かせるイメージがあります。
さて、順番に説明していくと以下の説明になりますが、この辺りは興味のあるところだけを読んで、飛ばしてしまっても大丈夫です。
上に書いてある特長をざっくり把握してもらえば、自分の使い道にあった選び方さえ分かれば良いわけですから。
特徴1 得意分野の違い
特徴2 対オンラインゲームに関して
特徴3 初心者向けか玄人向けか
特徴4 値段
特徴5 GPGPUに有利なのは?
APIサポート(DirectX、OpenGL)とは? 違いなど
Quadro と FireGL の業務用について
メーカー名 | NVIDIA (ヌビディア、エヌビディア) |
AMD(エーエムディー) |
---|---|---|
ブランド名 (プロ・業務用) |
Quadro (クアドロ) |
FireGL(ファイアージーエル) (FireGL、FireMV、FireStream) |
特徴 | もっぱら業務用に使われるが、3DオブジェクトやCADの図面など、3Dを流すだけなら個人向けでもできるが、編集したり製作することを考えるなら「Quadro」や「FireGL」が必要。 3D開発・メディアクリエイター・設計・建築会社等での主流はこちら。 |
Quadroは3D CADの世界では鉄板メニューですが、FireGLでも大抵は問題ありません。
どちらの方がどのソフトに向いているのか、などはソフトや用途によっても違いますが、ここでもシェアを取っているQuadro搭載機が多いことから、そうしたご案内をすることが多くなります。
ただ、最初に業務用として選んでおきつつ、後から「じゃあ、ゲームにも使ってみよう」とするのはお勧めできません。その手のことを考えていた方は以下の注意文をお読み下さい。
ゲーム用でも業務用でも総じて気をつけなければならないこと
これはどんな分野のものを選ぶのでもそうですが、使うソフトの種類だけでなく、使う内容によって必要となる型番はかなり変わってきます。
例えば、業務用では「Rhinoceros(ライノセラス、通称:ライノ)」や「Blender(ブレンダー)」などがそうですが、推奨スペックのページを調べても大した条件が出てきません。
「なら軽いソフトなんだな。指定のOpenGLに対応さえしていればオンボード(グラフィックカードなし)でもいけるな」と思うと、後で「しまった!」ということになります。
どういうことかというと、確かに動くには動くのですが、テクスチャをバシバシ貼り付けて、影を付けて、それも結構、細かく形をモデリングして、あまつさえリアルタイムに動かしながらレンダリング処理を繰り返して…などしようものなら、とんでもなく計算量が増えます。
ソフト自体は重くないのですが扱う幅が極端に広いので、推奨スペックが最低限の部分しか出ていないことが多いからです。
これはゲームに対するGTXシリーズでも同じことが言えます。
ぶっちゃけて言えば「Minecraft(マインクラフト)」などはオンボードの国内メーカーパソコンでも普通に動きますし、最初からサービスパッケージが入っているものもあるのですが、最高画質にして長時間使い続けようとするならGTX1060以上が必要です。
動画の編集でもそうです。
Adobeの「Premiere(プレミア)」を使いたいという人に対して、普通ならグラフィックカード搭載モデルを案内しますが、ちょっとした動画を加工するだけだったり、スラドショー的な単純なものを短時間造るくらいなら実はオンボードでもできます(ただしi5の第8世代U+8GB以上は欲しい)。
こうした失敗談はよくあることですが、もちろんあってはいけないことです。
デスクトップなら、グラフィックカードだけ積み替えることもできるとは思いますが、ノートパソコンだった日には外付けのグラフィックカード(eGPU)に頼らざるをえなくなります(外付けは普通に買うより高いです…それでいて高負荷時には出力15~20%くらい落ちますし、接続口が適合するかどうかも関わりますので、お勧めしずらいです)。
このパターンにハマる人はQuadroを搭載しているワークステーションを見て、結構な値段なのを知ってから、何とかコストを抑えられないかな、と考えあぐねて推奨ページを調べて…「なんとかなるかも」と思ってしまう場合です。
その辺のことを知っている販売員だと、ちゃんと使い方までヒアリングした上で「その使い方だとワークステーションじゃないと駄目です」と言ってくれます。
たまに「学校の課題を軽くやるだけだから」とお話頂けると、逆に値段を抑えて「GeForce GTX1060」あたりで販売できることもあります。
1060だと、3D CADでもできないわけではない、というくらいにまで頑張れますしQuadroほど高くもないので、値段的にも性能的にもセーフゾーンなのです。
この辺りのさじ加減はちょっと難しいかもしれません。
…と、ここまで書いておきながら言うと身もフタもないのですが、やはり判断がつかないようであれば、「この用途ならコレ」と素直にお勧めしているものを買うのが、間違いがなくていいです(いずれ、その辺りの用途別でのお勧めの機体紹介も書こうと思っています)。
とはいえ、大まかにでもいいので、ある程度は自分で性能を把握しておいた方がいいのは間違いありません。
そこで、型番や性能の見方を一覧表の下に記載しておきました。
型番や性能を見慣れていない方は、併せてご覧頂くと分かりやすいかと思います。
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