今回からしばらくグラフィックカードについての記事を書こうと思います。
グラフィックカードは説明することが多いので、今回は基本的な役割を。
もパソコン選びに慣れていない人が一から覚えて頂くためのものとして書いています。
映像、画像、ゲームにAI開発…そんなことに役立つグラフィックカードが何故役立つのか。
ご興味おありの方がいらっしゃいましたら、しばらくの間、お付き合い下さいませ。
グラフィックカードとは? 役割とか開発の歴史とか
グラフィックカードの基礎的な見方は次回にまわすとして、そもそも「ぐらふぃっくかーどって何ですか?」という人は意外と多いです(まあ、そういう人は大体お店に来てくれますけどね。そこを説明しちゃおうというのがこのサイトです)。
「ゲームするのに強いグラボがありゃいいんだよ」
その通りです。
ではあるのですが、ちょっと気になりませんか?
なぜ、わざわざグラフィックカードが必要になるのでしょう。
これって実はとんでもなく凄いことなんです。
分かっているようでいまいち意識できていなかったカードの中では一体、何が行われているのか。
グラフィックカードが必要とされるようになったのはいつからか。
今日はそんなお話をしたいと思います。
ゲーム開発の歴史とグラフィック性能の切っても切れない関係
今は昔。
ゲームと言えば荒いドット絵(それでもちゃんと見れた)が描かれたキャラやアイコンが平面の世界で動き回る程度だったのは、パソコンに5インチの薄っぺらいフロッピーディスクを使っていた頃のこと。
ファミリーコンピューターが爆発的ブームとなった時代、パソコンでは線画で描かれた3Dダンジョンを見てはプレイヤーの想像力は掻き立てられていたものです。
当時は、2次元の横スクロールアクションのゲームが主流の時代でした。
やがてRPGによる広い世界観と奥行きのあるストーリーは、ドラクエの名と共に広がり、ハードウェアはディスクドライブに。
急速に発展を遂げるゲーム業界は大容量を求めて、光学メディアになるのは自然の流れでした。
綺麗な画面で動きも良くなった画面に子供達を中心に釘付けになったものです。
しかし、この状況が一変します。
1999年3月2日のことでした。
8ビットのファミリーコンピューターから始まり、16ビットのスーパーファミコン、32ビットのプレイステーション…その階段をまた上がる。それだけのこと。
CPUのビット数が増えた、ソフト容量が増えた。
そんなのいつものことじゃないか。
しかし、多くの予想を超えて、ソニーが打ち出した中身は衝撃的だったのです。
「映画並みの高品位動画像がゲーム上で動かせる」
比喩ではなく事実、その通りの映像が公開されました。
森の中の美しい湖に風が吹き、湖面が揺れる。
光輝く波打ち際は、まるでどこかの映画会社に撮影してもらったかのよう。
しかし、それは撮られたわけではなく、造った、のです。
全て膨大な演算処理を並列して行い、そこにあるかのように表示させたものでした。
これがゲーム機か!?
会場にいたプレスの誰もがそう疑った映像を見ながら、久夛良木 健(元社長)はこう言いました。
「これまでタバコの煙さえ表現するのが難しかったCGが、次世代プレイステーションならば、煙どころか、粒子の単位で表現することもできます」
まさにこの言葉にグラフィック性能のなんたるかが要約されており、そして、ここからゲーム業界の階段は一歩どころか100歩くらい一気に階段を駆け上ったのです。
グラフィックカードの役割とは
例えば、目の前に家があったとして、その背景には山が見えていたとします。
観測者となっている視点が移動しなければ、2Dの組み合わせだけで良かったので2Dのデジ絵描きが腕を振るえば充分でした。
描画させるパソコンにしても大した能力は必要ありません。
しかし、その世界の視点が移動すると話が変わります。
物体に近づくことを考えたら、遠近法の距離計算が必要になります。
家の中に入れば大きく拡大される壁の模様(テクスチャ)も必要になるでしょう。
もちろん、光と影の陰影も計算させなければなりません。
これら一枚、一枚をとても人の手で描いてはいられません。
そこでポリゴンという点と点を結んだ線や面で表したもの(主に三角形の集合体)を、視覚的に表現する方法が使われるようになりました。
点を結んだ、というくらいですから、全てを点の座標で繋ぎ合せて表現できます。
ものの位置というのは、空間座標として捉えればタテとヨコを表すX軸とY軸。
それに奥行きを表すZ軸がクロスした数値です。
座標は全てそうした「3つの数字」で表せるわけですから、家の形に座標指定した数字の集合体を作ってしまえば、どの角度から見ても、それは3Dで表された…つまり「計算された家」なのです。
これらの座標計算は全ての座標が複合的かつ、並列処理されなければいけません。
そうでなければ、屋根の角度だけ変わっても、壁の位置はそのまま・・・などとなってしまい、おかしな家になってしまいます。
全ての座標計算を一度にできなければいけないことから、従来のCPUでは処理しきれず、そのため、グラフィックのみに特化させた並列処理専用のアクセラレーターが必要になりました。
それがグラフィックカードです。
つまり、グラフィックカードの役割というのは、膨大な数字の固まりである行列をかけたり足したりといった演算処理を、並行してひたすら繰り返し、繰り返し、繰り返すのが役割、となります。
「フレームレート」と「リフレッシュレート」の違い
ポリゴンは便利なものでしたが、描かれた家が視点の移動と共に角度を変えて描き出されるには、膨大な演算処理をし続けなければなりません。
観測者となる視点が一歩前に進めば、家の大きさが一歩分やや大きくなる。
右に一歩回り込めば、歩幅の分だけ家の角度は右に回転を始めます。
視点が移動し続けるなら、これを毎秒ごとに描画させ続けなければなりません。
動画というのは言ってみれば、連続して描き出される静止画の連続体ですから、一定時間内の描き出される静止画の枚数が多ければ多いほど、その動画は滑らかに動くことになります。
ぱらぱら漫画のコマ割りを連続して投影させるアニメーションと同じ原理です。
この一定時間内の静止画を描き出す枚数を「フレームレート」と呼びます。
1秒間に何枚の画像を描き出すか、という数値で表され「fps(frames per second=フレーム毎秒)」という単位を使います。
表示を更新する回数としては「リフレッシュレート」というのもありますが、これはモニター側の能力を表すHz(ヘルツ)という単位で表され、1秒間に何枚の画像を更新し続けられるのか、という数値になります。
混同しないで頂きたいのですが、「フレームレート」が送信側であり、ソフトウェア上から表示指示を送る回数であるのに対し、「リフレッシュレート」は受信側の表示させる回数、です。
同じ表示回数でも、送信側と受信側の違いと思って頂けると分かりやすいですね。
グラフィック性能側の出力が強ければ、それを表現する表示側となるモニターにも相応に高いHzのものが要求されます。
そうでなければ表示が追いつかなくなるテアリングが起きてしまうからです。
きちんと揃っていなければ動きの早いアクション性の高いゲームをする際には効果半減です。
グラフィックカードの世界では、この「フレームレート」の数値がどれだけ高いかを競い合うようなものです。
モニター側も「リフレッシュレート」をいかに高めるか、がゲーマーにとっては良いモニターか、ということに置き換えられます。
これらの数値が高ければ高いほど、複雑かつ、激しい動きのゲームでも滑らかに美しく見れるようになるわけです。
もし、グラフィックカードの演算能力がゲームの必要とする計算量に追いつかなければどうなるでしょうか。
逆にグラフィック能力が高くても、それを表現するモニター側が低かったらどうなるでしょう。
どちらかの性能がボトルネックとなって、能力を出し切ることができません。
そこでテアリングを起こさないよう、液晶ディスプレイのリフレッシュレートに、ゲーム側の「フレームレート」をぴったり合わせる方法が取られるようになってきました。
それが「V-Sync(垂直同期)」です。
「V-Sync」の設定に対応しているゲームではグラフィックカードのフレームレートとモニターのリフレッシュレートを同期させることができるので、同じレベルの送受信回数が揃っていればおかしな表示にはならないのです。
しかし、もし合わなかったらどうなるでしょうか。
ゲームの必要としているフレームレートに合わせて表示するリフレッシュレートを合わせるのが「V-Sync(垂直同期)」です。
ですが、同期しようにも性能の追いつかないグラフィックカードを使っていた場合、計算が追いつかずに途切れ途切れの送信状態…つまりカクカクした動きになってしまいます。
それが「スタッター(カクつき)現象」です。
これを見ると、fpsに応じたカクつき具合が分かるかと思います。
だからこそ、ゲーマーの人はより高い能力を持ったグラフィックカードを必要としていますし、そのように発展してきました。
一昔前のゲーム用では30fps。
最近だと90fps以上行くことも多く、受信するモニター側としても「144Hz以上あるといいよね」とか言われます。
ここまで読んで頂いた人なら、これがどれだけ凄いことか、お分かり頂けるかと思います。
先の例で言う家をポリゴンの座標(X,Y,Z)で表される点と線と面の集合体を、一回表示するだけでも数万行の計算が必要なところを、その計算を一秒間に144回以上、計算し、出力し続ける能力を持つグラフィックカードをパソコン側に搭載する、ということなのです。
昨今のCPUの処理能力の向上は素晴らしいものですが、CPUだけではとても追いつかなくなるのも納得できます。
これだけの処理を休みなく行い続けるには、やはり専用の部品(グラフィックカードと対応モニター)があった方が良いわけです。
現代のグラフィックカード、その先に求められるものとは
ここで先の例にある家の話に戻ります。
観測者と家の直線上に重なりあった背景の山々は、当然、家に隠れてしまうので見えません。
その分、背景を描かなくて済むのですから、計算は楽でした。
しかし、この家が突然、ミサイル攻撃を受けて吹っ飛んだとしたらどうでしょう?
ゲームならありがちなシーンです。
家は爆散し、家具はめちゃくちゃ。
焼け焦げた家の残骸と、煙に霞む山々が見えるだけ…。
はい、ここです。
この状況をCGで描く、としたら、どのように座標計算させたら良いでしょうか。
普通はできません。
半透明にすることはもちろんできても、それはのっぺらなものだったり、残骸は同様の法則で規則性をもった動きで指定することになります。
しかし、それではあまりにも不自然です。
自然の描画と動きに近づけるのがCGの到達点である以上、炎だったり煙だったり、不確定に動く存在をそのまま表現できなければいけません。
そこで「PhysX」とか「Havok」などの物理演算エンジンというプログラムが登場します。
※ 『ウィキペディア(Wikipedia)』の物理演算エンジンより。
物理の法則があるかのように法則性を持たせて動くアルゴリズムを組み込んでしまえば、あとはその法則に則って最初の動き始めるアクションを設定すればいいので簡単です。
これはゲームを行う側だけでなく、造る人にとっても便利なものでした。
残骸の散らばる一つ一つもそうですし、炎も煙も、陽炎のようにゆらぐ山々の背景もそうです。
3DCGの世界では、ファジーかつ柔らかい表現というのが恐ろしく難しいとされます。
先の久夛良木 健(元社長)の言にあるように「タバコの煙」という意味はここにあり、3DCGがゲームの世界で柔らかく表したのはプレイステーション2が初めてだったと思います。
光が反射する水が流れたり、人の髪の毛がサラサラと柔らかくなびく様子は、計算させるべき点の数、変化する色の数が多すぎてしまいます。
まして、その中に複数のキャラクターが同時プレイでゲームに参加しては激しい戦闘を行います。
当たり判定を計算させ続けながら、背景を描写するのですから…よくもまあそんなところまで一度に処理しきれる、と販売する仕事に就いていながら技術の進歩に感心してしまいます。
以下をご覧下さい。
これはMMORPGの一つ「黒い砂漠」と呼ばれる近年、流行っているオンラインゲームの宣伝用PVです。
※MMOとは大人数参加型のオンラインゲームのことです。
砂漠に舞う砂埃や、光の様子、鍛冶場の火の照り具合など…。
グラフィック性能が上がるということは、つまり、こういう表現を見ること、楽しむことができるということで、特に対戦型のゲームを勝ち抜こうとする人達は、常に強いグラフィック性能を求めています。
では、次に同じく「黒い砂漠」の開発段階でのPVを。
同様に世界観を感じ取れるような、良い完成度ですね。
対戦型だけでなく、自分のアバターとなる分身を細かく作りこめるのも、ある程度のグラフィック性能があったればこそ。
今時はこのように、現実世界同様、自分のアバターに様々なオシャレができるので、ちょっと現実世界で空いた時間に向こう側へ行ってみるのもいいでしょう。
それもこれも全ては昨今の優秀なグラフィックカードと、対応しているモニターと、開発側の努力の賜物というわけです。
コンシューマーを越えたPCゲーム達
先に例としてあげている「黒い砂漠」は世界レベルで人気のMMORPGですが、必要とされるスペックは極端に高くありません。
私は四年前のGTX960をメイン機として使用していますが、このゲームを行うには全く問題なくプレイできました。
中堅クラスのグラフィックカードが入っていれば、それで充分でしょう。
解像度を落とせば、やや弱めのボードでも問題ないでしょうからお勧めです。
ですが、オンボード(グラフィックカードなし)ではキツすぎます。
こだわる人ならモニターも相応のものを用意したいところですが、予算次第でしょうか。
先の例では、あえてゲームというカテゴリーということもあってプレイステーション2のことを引き合いに出しましたが、2019年現在の「プレイステーション4(以下、PS4と略)」では、もちろん格段にレベルが上がった能力を持っています。
ですが、結局のところそれらを表示するのはほとんどの場合、一般のTV画面です。
あくまでも普通のご家庭向けに造られたものなので、ゲーム機として見た時には「TVに繋げて遊ぶもの」という、任天堂が1983年に打ち出したファミリーコンピューターの発想から脱しているわけではないのです(その代わり、ゲーム機以外の能力を持たせる方向に進みましたので、それはそれで凄い進化なのですけどね)。
ですので、PS4は(X BOXなどでもそうですが)フレームレートは60fpsが上限とされます。
この時点で、ゲーム好きな人たちがパソコン側のゲームに興じる理由がお分かり頂けると思います。
パソコンの場合、動きの良さは家庭用ゲーム機を超えます。
特にキーボード操作もしやすいことから、MMORPGなどではチャットを使ったプレイヤー同士の意思の疎通も取りやすく、仮想世界に入り浸る人が出てきてしまうのも分からないでもないほどの面白さです。
つまり何を言いたいのかというと、一般家庭向けのコンシューマーゲーム機にはない面白さがパソコンゲームの世界には広がっているわけです。
また、それに相応しいラインナップがたくさん用意されている、という魅力もあります。
例えば、以下の「ドラゴンクエストX」は「黒い砂漠」ほど細かなことはできませんが、その代わりグラフィックカードなしでも、それなりの強いCPUが入っていれば楽しめます。
ですが、それは家庭用のゲーム機Wiiでも遊べるソフトの延長、ということに留まるわけです。
やはりパソコンでなければ楽しめないような遊び方のできる「黒い砂漠」などは、ぜひグラフィックカードの搭載されている機種で楽しんで頂きたいところです。
噂ではPS4で出るのでは…という話も聞きますが、膨大なアップデートと大量に消費するメモリをどうやって消化するのか。
課題は多そうなので、やはり今のところはPC版で楽しむしかなさそうです。
さて。
私程度の言葉ではとても足りないと思いますが、これだけの描画能力を生かしたゲームで細かい設定も可能なら、やってみたいと思う人もいらっしゃるのではないでしょうか。
いずれもっとゲームの話もしていきたいと思っています。
その時まで、「黒い砂漠」の話はひとまず取っておくことにしておきましょう。
ただ、先んじてお勧めさせて頂くならば、あなたが「黒い砂漠」を気に入って向こう側の世界へ旅立ちたいと思うようであれば、ドスパラがのパソコンがお勧めです。
割安感で言うなら「ガレリア RT5」辺りは一押しですね。
私自身がドスパラにお世話になっていることもありますし、良く知っていますがコストパフォーマンスとサポートは大手のメーカーパソコン以上です。
だからこそ私のメインPCはずっとドスパラと決めていますし、特にガレリアシリーズは拡張性も素晴らしく、自分で中を弄るにも都合が良いのです。
何しろ「RT5」なら、お値段10万円そこそこ。
その値段でも、私が今使っているメインPCの1.5倍以上の性能がありますから、「黒い砂漠」くらいのゲームだったら楽勝でしょう(私が欲しいくらいです)。

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