初めてパソコンを買う人はもちろん、パソコンの買い替え検討の人も「どれがいいんだろう」で迷うのが内部性能の見方です。
ここでいう内部性能とは、CPUやメモリのことですね。
それぞれの意味することは調べれば幾らでも出てくるのですが、「買う人にとってどれが必要か」の解説は少ないようです。
「要するにこれを買えばいいんだよ」という投げっぱなしの情報ではなく(これは売りたい人が要求しているだけ)、ご自身で判断頂くための基準を書いてみました。
パソコン選びの考え方・CPUとストレージとメモリの関係
CPUは車で言うエンジン部分。
ストレージはどれだけのデータを貯めておけるかの倉庫のようなもの。
ではメモリは?
メモリが上がっても早くなるのなら、CPUとの違いはどうなのか。
実は速さの質が全く違うのです。
メモリとは何のこと? 自然と行っている複数の作業を生かす為に
先の車に例えるなら、メモリとは道の広さとでも言えます。
狭い道を走るより、広い道の方が走りやすいですよね?
メモリがあればあるほど道が広がると思って下さい。
あなたの作業をしてくれる、というのは、あなたの作業を処理して(運んで)くれる車があるということです。
メモリが沢山あるパソコンなら、道が広いので車が速度を出しやすい=あなたの作業をすぐに処理してくれる、という言い方にもなるわけです。
換言すれば、メモリとは並行作業(転送速度)の強さのことでもあるわけですね。
何しろ、道が広くなれば沢山の車を一度に走らせることにも得意となるわけですから。
この道の広さを作動領域と呼びます。
こういう話を聞くと、よく「私、そんなに沢山の平行作業なんてしませんから、メモリ少なくていいですよ」と言う人がいます。
果たしてそうでしょうか。
例えば、調べ物をしていたとします。
今では調べ物もタブ分けしながら幾つもできますね。
調べながらワードやエクセルで資料的なものを造っていたとします。
それらの作業をしながら、音楽プレイヤー代わりに何かBGMを流していたとします。
メールソフト(メーラー)を立ち上げたりLINEのウィンドウを出しておき、いつでも友達から連絡が来ても話が出来るようにもしておくかもしれません。
更にあなたは動かしていませんが、安全にインターネットができるよう、パソコン内部ではセキュリティソフトを動かしてくれています。
ひとまずここまでとして、この状態で既に6種類のプログラムを走らせながら、4つのウィンドウを開いています。
OS内部も考えれば更に増えます。
人間であるあなたとしてはシンプルな作業をしているつもりかもしれません。
しかし、パソコン側では複雑な作業をこなすため、常に動き回っているのです。
もう一度お尋ねします。
平行作業はしませんか?
こう訊くと、先ほど「平行作業なんてしない」と言っていたお客様の内、8割以上の人が「それくらいはしている」と答えるものです。
ここに認識の差異があります。
もうしているのです、多くの人が。
平成生まれや令和育ちの方が当たり前のようにスマホを扱う時代に、パソコンの広い画面で平行作業をしない人は非常に少ないのです。
たとえ、一つ一つの作業が軽いものだったとしても、何気に行っている作業が平行しているならメモリは多いにこしたことはありません。
具体的には、この記事を書いている2018年年末現在、多くのメーカーで販売しているパソコンは下位機種で4GB、中位~上位8GB、最上位16GBといったところです。
このメモリの中には上記に書いたような、人間側での作業の他に、全ての動作の基本となるOS(当サイトではWindowsを指します)の作動領域も含みます。
そして、大して使っていないパソコンでも年々、動きが遅くなっていく理由はこのOSの作動領域不足によるところが大きいのです。
この辺りの理由は以前、OSの記事にて書いています。
メモリ表記の見方、作動領域は増設できる
では、実際に表示を見てみましょう。
これは Dynabook Direct のとある人気機種の性能表です。
と書いてありますね。
これは販売時には8GBのメモリが一枚しか入っていませんが、お客様自身で最大16GBまで増やすことができます、という表示です。
メモリは板状の部品でできており、スロットと呼ばれる差込口に挿し入れます。
メモリが一枚だけ挿してある状態で最大が16GBなどと書いてあれば、もう一つのスロットが空いている筈なので、8GBを買ってきて挿してあげれば 8×2=16GB まで増やすことができます。
もし、これが、
と書いてあったら、それ以上は増やせません。
スロットの数はカタログの細かい仕様書などには書いてあるのですが、あまり表には出ていないことが多いです。
国内パソコンなら多くのパソコンはスロットが2口用意されているものですが、上記の例のように8GBが一枚だけしか挿さらないなども時折あります(小型モデルに多いです)。
デュアルチャネルシステム対応なら「4GB + 4GB = 8GB」がお得なの?
4GB + 4GB = 8GB
とするのと、
8GBを一枚
…とでは、どちらが性能が上か。
同じ8GBでも、「4GB + 4GB = 8GB」の方が性能的に上になります。
これをデュアルチャネルシステムと言い、同じ容量、同じ規格のメモリであれば、データを送る速度を早めることができます。
体感速度としてすぐ分かるほど劇的に、とは言いづらい範囲ですが数値上ではまあまあ上がります。理論値では約2倍に上がると言われています。特にグラフィック性能は伸びしろがあるようで、ゲームを行う人がメモリを多く積載しているゲーミングを使用するのはそのためです。
2倍と聞くととんでもなく能力が上がるように聞こえますが、人間の普段の作業で快適さまでは二倍にはなりません。
一般的なお使いでの体感速度の違いでは、おおよそ1.2倍程度の違いとなります。以下、快適さを表すPCMark10による計測結果をまとめた記事になります。こちらを見て頂くと分かりますが、同じ機体で8GB×1 と 8GB×2=16GB を比較した時のトータルスコアは1.21倍差となっています。
「じゃあ、同じようなメモリ8GBの機種で迷うようなことがあれば、迷わず 4GB + 4GB = 8GB を選べば良いってことか」と考えたくなりますが、それは違います。
もし、あなたが将来、メモリ8GBで足りなくなってきたとして、16GBの最大まで上げたい、としたらどうでしょう?
スロットは2口あることが多いと書きましたが、逆に言うと2つしかないのです。
双方に4GBずつ入っていたのなら、どちらか一枚を抜かないと8GBのメモリは挿せません。
1枚だけ8GBを買っても、「4GB + 8GB = 12GB」にしかならないので、最高スペックにするには2枚買う必要があります。
一方、最初から8GBを一枚挿さっているだけなら、最初こそデュアルチャネルの恩恵は受けられませんが、8GBを一枚買えば、それだけで最大16GBまで上げることができ、しかもデュアルチャネルに対応させることができます。
どっちが得かどうかは、そのパソコンをどう使うか、どこまで使う(拡張する)か、という使用計画により変わるのです。
使用計画は大切で「どのみちパソコンの裏蓋なんて外さないよ」と言うなら「4GB + 4GB = 8GB」の方がお勧めになりますし、「いや、長年使うことを考えれば、メモリを最大まで上げたいと思う」というなら8GB一枚挿しの方がお勧めになります。
少ない部分ではありますが、性能が上がるならそれに越したことはありません。先に書いたように、基本的に同じメモリ数であれば対応です。ただし、同じ規格であれば。ここが曲者で、規格が違うと同じメモリ数であってもデュアルチャネルは働かないのです。これは店舗でも調べるのが容易ではないほど細かい部分なので、最初に挿さっているメモリに買い足すのなら、お勧めとしては、購入前に裏蓋を外して、同じメーカーの同じ型番を買ってしまうのが手堅いです。
最近では、メーカーが違っても型が近ければ対応していることも増えたようですが、もし、気にされるようでしたら、その時には思い出して頂ければと思います。
メモリ増設は小学生でもできます
スロットにメモリを挿す作業自体は簡単です。
裏蓋の外せるパソコンなら簡単に外して取り付けることができます。
「パソコンの中身を開けるなんて…!」
と多くの方が怖がってしまうのですが、プラモデルを造るよりも手軽にできますので、メモリを買うことがあればぜひ挑戦してみて下さい。
この写真は分かりやすいよう、デスクトップパソコンの基盤にメモリを挿すところですが、ノートパソコンでも基本は同じです。
入れ方が縦に入れるか、寝そべるように横に入れるか、だけの違いです。
型の合っているメモリであれば、「カチッ」とするまで奥に入れれば良いだけです。
どの型が適合するか調べ方もいずれ機会があれば記事にしたいのですが、確実なのはお近くの量販店でパソコンの型番を伝えて調べてもらうことです。
こういう時にこそ、人のいる実店舗を利用すべきで、まさに人の行うサービスでなければできない部分です。もっとも、そこは店舗側も分かっているので、値段はネットで買うよりも割高ですし、調べてもらう時間帯が忙しければ待ち時間が発生します。面倒ならそのまま店で買ってしまうのもありですが、少しでも節約するなら、ネットから買うのもお勧めです(特にAmazonはメチャ安です)。
当サイトで紹介しているパソコン記事内には、適合するメモリを紹介しています。動作確認まで取れているわけではないので、完全に自己責任になりますが、ご自分で調べるのが面倒な方は、記事内に記載されているメモリを購入してお試し頂くのでも良いと思います。
静電気を起こさないようご注意下さい。静電気で端子を痛めてしまうことがあります。
また、電源が切れている状態で行うようにして下さい。
もし、形が合わないで入らないようなら、無理に挿そうとせず、左右、裏表を逆にするなどで試してみて下さい。
メモリの交換は一種の改造とみなされてしまい、ほとんどのメーカーで保証対象外になってしまいます。唯一、そこが改造とみなされないのはDynabookだけで(2021年春時点)、実際にDynabookの機体はメモリ交換を含めて改造しやすい機構になっていることが多いです。他の国内メーカーであっても保証を使って修理するようなことになった場合は、追加したメモリを外して購入時の状態に戻してから出せば保証を受けられます(車の車検のようなものです)。
ただし、この方法は主要国内メーカーだけに限った話で、海外メーカーでは封印シールや、様々な機構を施して裏蓋を外したことが分かるようにシステム化されていることが多いです。この場合、メモリを増設しようとしまいと裏蓋を外した時点で保証対象外になりますので、ご注意下さい。
メモリの増設をした後には確認作業を忘れずに
メモリを増設した後で電源を入れ、ちゃんとメモリが認識されているかどうかを確認しないといけません。
もし、型番が違うものを挿してしまっていたら、OSが認識しないということもありえるからです。
調べ方も簡単です。
手順① フォルダを開いて、最初の画面にある「コンピューター」の上で右クリック
の後に、
手順② 出てきたコマンド一覧の下にある「プロパティ」を左クリック
すると、
「実装メモリ」の数値を確認
以下のように簡単なOS情報や、CPU情報が出てきます。
その中にある「実装メモリ」が認識されているメモリ数です。
ちなみに、こちらの画像はWindows7のものですが、10でも出し方は変わりません。
もし、認識していないようでしたら初期不良か型違いの可能性があるので、一度外してから購入店にご相談下さい。
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